くつおと》や砲車の響。小学校の唱歌。一丁はなれた隣家の柱時計が聞こゆる日もある。一番好いのは、春四月の末、隣の若葉した雑木林に朝日が射す時、ぽたり……ぽたりと若葉を辷《すべ》る露の滴《したた》りを聴くのである。
夏秋の虫の音の外に、一番嬉しいのは寺の鐘《かね》。真言宗の安穏寺《あんのんじ》。其れはずッと西南へ寄って、寺は見えぬが、鐘の音《ね》は聞こえる。東覚院《とうがくいん》、これも真言宗、つい向うの廻沢《めぐりさわ》にあって、寺は見えぬが、鐘の音は一番近い。尤も東にあるのが船橋の宝性寺《ほうしょうじ》、日蓮宗で、其草葺の屋根と大きな目じるしの橡《とち》の木は、小さく彼の縁から指さゝれる。
大木は地の栄《さかえ》である。彼の周囲に千年の古木《こぼく》は無い。甲州の山鏈《さんれん》を突破する二本松と、豪農の杉の森の外、木らしい木は、北の方三丁ばかり畑を隔《へだ》てゝ欅《けやき》の杜《もり》の大欅が亭々と天を摩して聳《そび》えて居る。其若葉は此あたりで春の目じるし、其|鳶色《とびいろ》は秋も深い目じるしである。北の方は、此欅の中の欅と下枝を払った数本のはら/\松を点景にして、林から畑、
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