つめた丘《おか》の頂《いただき》は、隣字の廻沢《めぐりさわ》である。雑木林に家がホノ見え、杉の森に寺が隠れ、此程並木の櫟《くぬぎ》を伐ったので、畑の一部も街道も見える。彼が粕谷《かすや》に住んだ六年の間に、目通りに木羽葺《こっぱぶき》が一軒、麦藁葺《むぎわらぶき》が一軒出来た。最初はけば/\しい新屋根が気障《きざ》に見えたが、数年の風日は一を燻《くす》んだ紫に、一を淡褐色《たんかっしょく》にして、あたりの景色としっくり調和して見せた。此《この》丘《おか》を甲州街道の滝阪《たきざか》から分岐《ぶんき》して青山へ行く青山街道が西から東へと這《は》って居る。青山に出るまでには大きな阪の二つもあるので、甲州街道の十分の一も往来は無いが、街道は街道である。肥車《こやしぐるま》が通う。馬士《まご》が歌うて荷馬車を牽《ひ》いて通る。自転車が鈴を鳴《な》らして行く。稀に玉川行の自動車が通る。年に幾回か人力車が通る。道は面白い。座《すわ》って居て行路の人を眺《なが》むるのは、断片《だんぺん》の芝居を見る様に面白い。時々は緑《みどり》の油箪《ゆたん》や振りの紅《くれない》を遠目に見せて嫁入りが通る。附近に
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