が咲く。蛙が鳴く。膝まで泥になって、巳之吉亥之作が田螺拾《たにしひろ》いに来る。簑笠《みのかさ》の田植は骨でも、見るには画である。螢には赤い火が夏の夜にちら/\するのは、子供が鰌突《どじょうつ》きして居るのである。一条の小川が品川堀の下を横に潜《くぐ》って、彼の家の下の谷を其南側に添うて東へ大田圃の方へと流れて居る。最初は女竹《めだけ》の藪の中を流れ、それから稀に葭《よし》を交えた萱《かや》の茂る土堤《どて》の中を流れる。夏は青々として眼がさめる。葭切《よしきり》、水鶏《くいな》の棲家《すみか》になる。螢が此処からふらりと出て来て、田面に乱れ、墓地を飛んでは人魂《ひとだま》を真似て、時々は彼が家の蚊帳《かや》の天井まで舞い込む。夏は翡翠《ひすい》の屏風《びょうぶ》に光琳《こうりん》の筆で描いた様に、青萱《あおかや》まじりに萱草《かんぞう》の赭《あか》い花が咲く。萱、葭の穂が薄紫に出ると、秋は此小川の堤《つつみ》に立つ。それから日に/\秋風《あきかぜ》をこゝに見せて、其薄紫の穂が白く、青々とした其葉が黄ばみ、更に白らむ頃は、漬菜《つけな》を洗う七ちゃんが舌鼓《したつづみ》うつ程、小川の水
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