ん》の如く凝《こ》って居る。
 日は段々高く上り、次第に熱して来る。一切の光熱線《こうねつせん》が悉く此径三尺の液体《えきたい》天地に投射《とうしゃ》せらるゝかと思われる。冷たく井を出た水も、日の熱心にほだされて、段々冷たくなくなる。生温《なまぬる》くなる。所謂日なた水になる。正午の頃は最早湯だ。非常に暑い日は、甕の水もうめ水が欲しい程に沸く。
 午後二時三時の交《あいだ》は、涼しいと思う彼の家でも、九十度にも上る日がある。風がぱったり止まる日がある。昼寝にも飽きる。新聞を見るすらいやになる。此時だ、此時彼は例の通り素裸《すっぱだか》で薩摩下駄をはき、手拭《てぬぐい》を持って、突《つ》と庭に出る。日ざかりの日は、得たりや応《おう》と真裸の彼を目がけて真向から白熱箭《はくねつせん》を射かける。彼は遽《あわ》てず騒がず悠々と芝生を歩んで、甕の傍に立つ。先《まず》眼鏡《めがね》をとって、ドウダンの枝にのせる。次ぎに褌《したおび》をとって、春モミジの枝にかける。手拭を右の手に握り、甕から少しはなれた所に下駄を脱いで、下駄から直に大胯《おおまた》に片足を甕に踏み込む。呀《あ》、熱《あつ》、と云い
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