も飲まぬが、彼は色にはタワイもなく酔う。曾て戯れにある人のはがき帖《じょう》に、
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此身|蝶《てふ》にもあるまじけれど
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わけもなくうれしかりけり日は午《ご》なる
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真夏《まなつ》の園《その》の花のいろ/\
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三
変化の鮮やかは夏の特色である。彼の郷里熊本などは、昼間《ひるま》は百度近い暑さで、夜も油汗《あぶらあせ》が流れてやまぬ程|蒸暑《むしあつ》い夜が少くない。蒲団《ふとん》なンか滅多に敷かず、蓙《ござ》一枚で、真裸に寝たものだ。此様《こんな》でも困る。朝顔の花一ぱいにたまる露の朝涼《ちょうりょう》、岐阜《ぎふ》提灯《ちょうちん》の火も消えがちの風の晩冷《ばんれい》、涼しさを声にした様な蜩《ひぐらし》に朝涼《あさすず》夕涼《ゆうすず》を宣《の》らして、日間《ひるま》は草木も人もぐったりと凋《しお》るゝ程の暑さ、昼夜の懸隔《けんかく》する程、夏は好いのである。
ヒマラヤ[#「ヒマラヤ」に二重傍線]を五《いつつ》も積み重ねた雲の峰が見る間に崩《くず》れ落ちたり、濃《こ》いイン
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