よ。それから兄の所から三|円《りょう》宛ね、くれますよ。ソレ小遣《こづかい》が足りねえと、上祖師ヶ谷の様にならァね」
「月に六円宛、其れは大変だね」
「岩もね、其当座は腹が減って困ったてこぼして居ましたっけ。何《なん》しろ麦飯の七八|杯《はい》もひっかけて居ったンだからね。酒保《しゅほ》に飛んで行き/\したって話してました。今じゃ大きに楽《らく》になったってますよ。最早《もう》あと一年半で帰《けえ》って来ますだよ」
農家から大切な働き男を取って、其上間接に小使としての税金を金の乏しい農村から月々六円もとる兵役と云うものについて、美的百姓は大に考えざるを得なかった。
五
母屋では、最早《もう》仕度が出来たと見え、棺が縁の方に舁《か》き出された。柿の木の下では、寝た者も起き、総立になった。手々《てんで》に白張提灯を持ったり、紙の幟《はた》を握ったり、炬火《たいまつ》をとったりした。辰爺さんはやおら煙草入を腰に插して鉦《かね》と撞木《しゅもく》をとった。
「旗が先に行くかね、提灯《ちょうちん》かね?」
「冥土《めいど》の案内じゃ提灯が先だんべ」
「東京じゃ旗が先きに行く
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