14−87]《うん》」と久さんは答えて、のそり/\檐下《のきした》から引き出して、二握三握一つにして、トンと地につき揃《そろ》えて、無雑作《むぞうさ》に小麦からで縛《しば》って、炬火をこさえた。
「まだかな」先刻《さっき》から焦々《いらいら》して居る辰爺さんが大声に唸《つぶ》やく。
「今本膳が出てる処だからな」母屋の方を見ながら一人が辰さんを宥《なだ》める。
「それはソウと、上祖師《かみそし》ヶ谷《や》の彦さんは分ったかな」
「分からねえとよ。中隊でも大騒ぎして、平服で出る、制服で出る、何でも空井戸《からいど》を探してるちゅうこンだ」
「窘《いじ》められたンですかね?」
「ナニ、中隊では評判がよかったンですよ。正直でね」
「正直者が一番|危《あぶ》ねえだ。少し時間に後《おく》れたりすると、直ぐ無分別をやるからな」
「違えねえ」
 皆一寸黙った。
 辰爺さんは、美的百姓に大きな声で囁《ささ》やいた。「岩もね、上等兵の候補者になりましたってね」
「然《そう》かね。岩さんは何処に往っても可愛がられる男だよ」
「毎月ね、」辰爺さんは声を落して囁いた。「毎月ね、三|円《りょう》宛《ずつ》やります
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