誰やらが嘆息する。
 時分《じぶん》だから上れと云わるゝので、諸君の後について母屋の表《おもて》縁側《えんがわ》から上って、棺の置いてある十畳の次ぎの十畳に入る。頭の禿《は》げた石山氏が、黒絽の紋付、仙台平の袴で、若主人に代って応対《おうたい》する。諸君と共に二列に差向って、饌《ぜん》に就く。大きな黒塗の椀に堆《うずたか》く飯を盛ってある。汁椀《しるわん》は豆腐と茄子《なす》と油揚《あぶらあげ》のつゆで、向うに沢庵《たくあん》が二切つけてある。眼の凹《くぼ》い、鮫の歯の様な短い胡麻塩《ごましお》髯《ひげ》の七右衛門爺さんが、年増《としま》の婦人と共に甲斐※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]しく立って給仕《きゅうじ》をする。一椀をやっと食い終えて、すべり出る。

       二

 柿の木蔭《こかげ》は涼しい風が吹いて居る。青苔《あおごけ》蒸《む》した柿の幹から花をつけた雪の下が長くぶら下って居る。若い作男が其処にあった二台の荷車を引きのけ、大きな鍵《かぎ》で土蔵の戸前を開けて、蓆《むしろ》を七八枚出して敷いてくれた。其れに座《すわ》った者もある。足駄ばきのまゝ
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