履《ぞうり》の音をさせて入って来た。
「あッ綺麗だな、俺《おら》がのも明けてやるべ」
と云って、また二人して八九|疋《ひき》螢の島へ螢を放《はな》った。
 主人《あるじ》と妻と逗留《とうりゅう》に来て居る都の娘と、ランプを隅へ押《お》しやって、螢と螢を眺むる子供を眺める。田圃《たんぼ》の方から涼しい風が吹いて来る。其風に瞬《またた》く小さな緑玉《エメラルド》の灯でゞもあるように、三十ばかりの螢がかわる/″\明滅する。縁にかけたり蹲《しゃが》んだりして、子供は黙って見とれて居る。
 斯涼しい活画《いきえ》を見て居る彼の眼前に、何時《いつ》とはなしにランプの明るい客間《パーラー》があらわれた。其処に一人の沈欝《ちんうつ》な顔をして丈高《たけたか》い西洋人が立って居る。前には学生が十五六人腰かけて居る。学生の中に十二位の男の子が居る。其は彼自身である。彼は十二の子供で、京都同志社の生徒である。彼は同窓諸子と宣教師デビス先生に招かれて、今茶菓と話の馳走になって居るのである。米国南北戦争に北軍の大佐であったとか云うデビス先生は、軍人だけに姿勢が殊に立派で、何処やら武骨《ぶこつ》な点もあって、真面
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