小さな影が二つ三つ四つ縁先にあらわれた。小さな握拳《にぎりこぶし》の指の間から、ちら/\碧《あお》い光を見せて居る。
 皆近所の子で、先夜|主人《あるじ》が「ミゼラーブル」の話を聞いて息をのんだ連中《れんじゅう》である。
「螢を捕《と》ったね」
「え」
と一人が云ったが、
「あ、此れに這《は》わせて見べいや」
と云って、縁先《えんさき》に据《す》えてある切株の上の小さな姫蘆《ひめあし》の橢円形《だえんけい》の水盤《すいばん》へ、窃《そっ》と拳《こぶし》の中のものを移した。
 すると、余《よ》の子供が吾も吾もと皆手を水盤の上に解《と》いた。水を吹いた小さな姫蘆の葉の上、茎の間、蘆の根ざす小さな岩の上に、生きた、緑玉《りょくぎょく》、碧玉、孔雀石《くじゃくせき》の片がほろ/\とこぼれて、其数約二十余、葉末の露にも深さ一分の水盤の水にも映《うつ》って、光ったり、消えたり、嬉《うれ》しそうに明滅《めいめつ》して、飛び立とうともしない。
「綺麗《きれい》だ喃《なあ》」
「綺麗だ喃」
 皆|嬉々《きき》としてしたり貌《がお》にほめそやす。
「皆何してるだか」
 云って、また二人《ふたり》男の子が草
前へ 次へ
全684ページ中204ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
徳冨 蘆花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング