州街道口に一台の車も居ない。媒妁夫婦は、潜《くぐ》りの障子だけあかりのさした店に入って、足駄《あしだ》と傘とブラ提灯《ちょうちん》と蝋燭とマッチと糸経《いとだて》を買った。而《そう》しておの/\糸経を被《かぶ》り、男が二人のぬいだ日和下駄を風呂敷包《ふろしきづつみ》にして腰につけ、小婢《こおんな》にみやげの折詰|二箇《ふたつ》半巾《はんかち》に包んで片手にぶら下げて、尻高々とからげれば、妻は一張羅《いっちょうら》の夏帯を濡《ぬ》らすまいとて風呂敷を腰に巻き、単衣の裾短に引き上げて、提灯ぶら提げ、人通りも絶え果てた甲州街道三里の泥水をピチャリ/\足駄に云わして帰った。
「如何《どう》だ、此《この》態《ざま》を勝田君に書いてもらったら、一寸《ちょっと》茶番《ちゃばん》の道行が出来ようじゃないか」
 夫が笑えば、妻も噴《ふ》き出し、
「本当にね」
と相槌《あいづち》をうった。
 新郎《しんろう》勝田君は、若手で錚々《そうそう》たる劇作家《ドラマチスト》である。
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     螢

 先刻《さっき》から田圃《たんぼ》に呼びかわす男の子の声がして居たと思うたら、闇《やみ》の門口から
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