を新郎に渡し、あらためて新郎の手ずから新婦の指に嵌《は》めさす。二人ながら震えて居る。
屋敷に門無く、障子は穴だらけである。村あってより見たこともない夥《おびただ》しい車の入来《じゅらい》に眼を驚かした村の子供が、草履《ぞうり》ばた/\大勢《おおぜい》縁先《えんさき》に入り込んで、ぽかんとした口だの、青涕《あおばな》の出入する鼻だの、驚いた様な眼だのが、障子の穴から覗《のぞ》いて居る。「何だ、ありゃ」。「あ、あ、あら、如何《どう》するだンべか」なンか云って居る。
六畳の大広間には、新郎新婦相並んで正面赤毛布の上に座《すわ》って居る。結婚証書を三通|新婦《はなよめ》の兄者人に書いてもらって、新郎新婦をはじめ其|尊長達《そんちょうたち》、媒妁夫妻も署名した。これで結婚式は芽出度終った。小婢《こおんな》が茶を運んで来た。菓子が無いので、有り合せの梨《なし》を剥《む》き、数が無いので小さく切って、小楊枝《こようじ》を添《そ》えて出した。
四時過ぎお開きとなった。
媒妁《なかだち》の役目相済んだつもりで納まって居ると、神田《かんだ》の料理屋で披露の宴をするとの事で、連れて来られた車にのせ
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