掘器《たけのこほり》、天秤棒を買って帰る者、草履《ぞうり》の材料やつぎ切れにする襤褸《ぼろ》を買う者、古靴を値切《ねぎ》る者、古帽子、古洋燈、講談物《こうだんもの》の古本を冷かす者、稲荷鮨《いなりずし》を頬張《ほおば》る者、玉乗の見世物の前にぽかんと立つ者、人さま/″\物さま/″\の限を尽す。世田ヶ谷のボロ市を観《み》て悟《さと》らねばならぬ、世に無用のものは無い、而《そう》して悲観は単に高慢であることを。
ボロ市過ぎて、冬至もやがてあとになり、行く/\年も暮《くれ》になる。蛇《へび》は穴に入り人は家に籠《こも》って、霜枯《しもがれ》の武蔵野は、静かな昼《ひる》にはさながら白日《まひる》の夢に定《じょう》に入る。寂しそうな烏が、此|樫《かし》の村から田圃を唖々《ああ》と鳴きながら彼|欅《けやき》の村へと渡る。稀には何処から迷い込んだか洋服ゲートルの猟者が銃先《つつさき》に鴫《しぎ》や鵯《ひよ》のけたゝましく鳴いて飛び立つこともあるが、また直ぐともとの寂しさに返える。凩《こがらし》の吹く夜は、海の様な響《ひびき》が武蔵野に起って、人の心を遠く遠く誘《さそ》うて行く。但東京の屋敷に頼《た
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