さきやま》が入って、啣《くわ》え煙管《ぎせる》で楢《なら》や櫟《くぬぎ》を薪に伐《き》る。海苔疎朶《のりそだ》を積んだ車が村を出る。冬至までは、日がます/\つまって行く。六時にまだ小暗《おぐら》く、五時には最早《もう》闇《くら》い。流しもとに氷が張る。霜が日に/\深くなる。
十五日が世田《せた》ヶ谷《や》のボロ市。世田ヶ谷のボロ市は見ものである。松陰《しょういん》神社《じんじゃ》の入口から世田ヶ谷の上宿《かみじゅく》下宿を打通して、約一里の間は、両側にずらり並んで、農家日用の新しい品々は素より、東京中の煤掃《すすは》きの塵箱《ごみばこ》を此処へ打ち明けた様なあらゆる襤褸《ぼろ》やガラクタをずらりと並べて、売る者も売る、買う者も買う、と唯驚かるゝばかりである。見世物が出る。手軽な飲食店が出る。咽《のど》を稗《ひえ》が通る様に、店の間を押し合いへし合いしてぞろ/\人間《にんげん》が通る。近郷《きんごう》近在の爺さん婆さん若い者女子供が、股引《ももひき》草鞋《わらじ》で大風呂敷を持ったり、荷車を挽《ひ》いたり、目籠《めかご》を背負ったりして、早い者は夜半から出かける。新しい莚《むしろ》、筍
前へ
次へ
全684ページ中196ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
徳冨 蘆花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング