抵では無い。
兵隊さんの出代《でがわ》りで、除隊を迎えると、直ぐ入営送りだ。体格がよく、男の子が多くて、陸海軍拡張の今日と来て居るので、何れの字からも二人三人兵士を出さぬ年は無い。白羽《しらは》の箭が立った若者には、勇んで出かける者もある。抽籤《くじ》を遁《のが》れた礼参りに、わざ/\鴻《こう》の巣《す》在《ざい》の何宮さんまで出かける若者もある。二十歳《はたち》前後が一番百姓仕事に実《み》が入る時ですから、とこぼす若い爺《とっ》さんもある。然し全国皆兵の今日だ。一人息子でも、可愛息子でも、云い聞かされた「国家の為」だ、出せとあったら出さねばならぬ。出さぬと云ったら、お上に済まぬ。近所に済まぬ。そこで父の右腕《みぎうで》、母のおもい子の岩吉も、頭は五分刈、中折帽、紋付羽織、袴、靴、凜《りゅう》とした装《なり》で、少しは怯々《おどおど》した然し澄《す》ました顔をして、鎮守の宮で神酒《みき》を飲まされ、万歳の声と、祝入営の旗五六本と、村楽隊と、一字総出の戸主連に村はずれまで見送られ、知らぬ生活に入る可く往ってしまう。二三日、七八日《ななようか》過ぐると、軒別に入営済《にゅうえいずみ》の御
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