きは新調のカーキー服にギュウ/\云う磨き立ての長靴、腰の淋《さび》しいのを気にしながら、胸に真新《まあたら》しい在郷軍人|徽章《きしょう》をつるして、澄まし返《かえ》って歩いて来る。面々|各自《てんで》の挨拶がある。鎮守の宮にねり込んで、取りあえず神酒《みき》一献《いっこん》、古顔の在郷軍人か、若者頭の音頭《おんど》で、大日本帝国、天皇陛下、大日本帝国陸海軍、何々丑之助君の万歳がある。丑之助君が何々有志諸君の万歳を呼ぶ。其れから丑之助君を宅《たく》へ送って、いよ/\飲食《のみくい》だ。赤の飯、刻※[#「魚+昜」、上巻−147−8]《きざみするめ》菎蒻《こんにゃく》里芋蓮根の煮染《にしめ》、豆腐に芋の汁、はずんだ家では菰冠《こもかぶ》りを一樽とって、主も客も芽出度《めでたい》と云って飲み、万歳と云っては食い、満腹満足、真赤《まっか》になって祝うのだ。二三日すると帰り新参《しんざん》の丑之助君が、帰った時の服装《なり》で神妙《しんみょう》に礼廻りをする。軒別に手拭か半紙。入営に餞別《せんべつ》でも貰った家へは、隊名姓名を金文字で入れた盃や塗盆《ぬりぼん》を持参する。兵士一人出す家の物入も大
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