[#「魚+是」、第4水準2−93−60]《しこ》は? ※[#「魚+是」、第4水準2−93−60]?」「秋刀魚《さんま》や秋刀魚!」のふれ声が村から村を廻《まわ》ってあるく。牛豚肉は滅多《めった》に食わず、川魚は少《すくな》し、稀《まれ》に鼬《いたち》に吸われた鶏《とり》でも食えば骨《ほね》までたゝいて食い、土の物の外は大抵|塩鮭《しおざけ》、めざし、棒鱈にのみ海の恩恵を知る農家も、斯様《こん》な時には炙《あぶ》れば青い焔《ほのお》立《た》つ脂ぎった生魚を買って舌鼓《したつづみ》うつのである。
 月の末方《すえがた》には、除隊の兵士が帰って来る。近衛か、第一師団か、せめて横須賀《よこすか》位《ぐらい》ならまだしも、運悪く北海道三界|旭川《あさひがわ》へでもやられた者は、二年ぶり三年ぶりで帰って来るのだ。親類《しんるい》縁者《えんじゃ》は遠出の出迎、村では村内少年音楽隊を先に立て、迎何々君之帰還《なになにくんのきかんをむかう》の旗押立てゝ、村界まで迎いに出かける。二年三年の兵営《へいえい》生活《せいかつ》で大分|世慣《よな》れ人ずれて来た丑之助君が、羽織袴、靴、中折帽、派手《はで》をする向
前へ 次へ
全684ページ中192ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
徳冨 蘆花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング