と、それから緑の縞《しま》を土に織り出して最早ぼつ/\生えて来た大麦小麦ばかりである。
 霜は霽《はれ》に伴う。霜の十一月は、日本晴《にっぽんばれ》の明るい明るい月である。富士は真白。武蔵野の空は高く、たゝけばカン/\しそうな、碧瑠璃《へきるり》になる。朝日夕日が美しい。月や星が冴《さ》える。田は黄色から白茶《しらちゃ》になって行く。此処其処の雑木林や村々の落葉木が、最後の栄《さかえ》を示して黄に褐《かち》に紅に照り渡る。緑の葉の中に、柚子《ゆず》が金の珠を掛ける。光明は空《そら》から降《ふ》り、地からも湧《わ》いて来る。小学校の運動会で、父兄が招かれる。村の恵比寿《えびす》講《こう》、白米五合銭十五銭の持寄りで、夜徹《よっぴて》の食ったり飲んだり話したりがある。日もいよ/\短くなる。甘藷や里芋も掘って、土窖《あな》に蔵《しま》わねばならぬ。中稲《なかて》も苅らねばならぬ。其内に晩稲《おくて》も苅らねばならぬ。でも、夏の戦闘《たたかい》に比べては、何を云っても最早しめたものである。朝霜、夜嵐《よあらし》、昼は長閑《のどか》な小春日がつゞく。「小春日や田舎に廻る肴売《さかなうり》」。「※
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