るのだ。
最早|梅雨《つゆ》に入って、じめ/\した日がつゞく。簑笠《みのかさ》で田も植えねばならぬ。畑勝《はたが》ちの村では、田植は一仕事、「植田《うえだ》をしまうとさば/\するね」と皆が云う。雨間《あまま》を見ては、苅り残りの麦も苅らねばならぬ。苅りおくれると、畑の麦が立ったまゝに粒から芽をふく。油断を見すまして作物《さくもつ》其方退《そっちの》けに増長して来た草もとらねばならぬ。甘藷《さつま》の蔓《つる》もかえさねばならぬ。陸稲《おかぼ》や黍《きび》、稗《ひえ》、大豆の中耕《ちゅうこう》もしなければならぬ。二番茶《にばんちゃ》も摘《つ》まねばならぬ。お屋敷に叱《しか》られるので、東京の下肥《しもごえ》ひきにも行かねばならぬ。時も時とて飯料《はんりょう》の麦をきらしたので、水車に持て行って一晩《ひとばん》寝《ね》ずの番をして搗《つ》いて来ねばならぬ。最早甲州の繭買《まゆかい》が甲州街道に入り込んだ。今年は値《ね》が好くて、川端《かわばた》の岩さん家では、四円十五銭に売ったと云う噂《うわさ》が立つ。隣村の浜田さんも繭買をはじめた。工女の四五人入れて足踏《あしぶみ》器械《きかい》で製糸
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