をつるし、今日《きょう》から小学第一年生だと小さな大手を振って行く。五六年前には、式日《しきじつ》以外《いがい》女生の袴《はかま》など滅多に見たこともなかったが、此頃では日々の登校にも海老茶《えびちゃ》が大分|殖《ふ》えた。小学校に女教員が来て以来の現象である。桃之《ももの》夭々《ようよう》、其葉|蓁々《しんしん》、桃の節句は昔から婚嫁《こんか》の季節だ。村の嫁入《よめいり》婿取《むことり》は多く此頃に行われる。三日三晩村中呼んでの飲明《のみあか》しだの、「目出度《めでた》、※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]《めでた》の若松様《わかまつさま》よ」の歌で十七|荷《か》の嫁入荷物を練込《ねりこ》むなぞは、大々尽《だいだいじん》の家の事、大抵は万事手軽の田舎風、花嫁自身髪結の家から島田で帰って着物を更《か》え、車は贅沢《ぜいたく》、甲州街道まで歩いてガタ馬車で嫁入るなぞはまだ好い方だ。足入れと云ってこっそり嫁を呼び、都合《つごう》の好い時あらためて腰入《こしいれ》をする家もある。はずんだところで調布《ちょうふ》あたりから料理を呼んでの饗
前へ 次へ
全684ページ中165ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
徳冨 蘆花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング