生は彼様《あん》な死をされた。あなたは衷心《ちゅうしん》に確にソレを知ってお出です。夫人、あなたは其深い深い愛の下《もと》に頭を低《た》れて下さることは出来ないのでしょう乎。人の霊魂は不覊《ふき》独立《どくりつ》なもの、肉体一世の結合は彼|若《もし》くば彼女の永久の存在を拘束することは出来ないのですから、先生の生前、先生は先生の道、あなたはあなたの路《みち》を別々に辿《たど》られたのも致方は無いものゝ、先生が肉の衣《ころも》を脱がれた今日、私は金婚式でも金剛石婚式《こんごうせきこんしき》でもなく、第二の真の結婚が御両人《おふたり》の間に成就されん事を祈って已《や》まないのであります。悲哀《ひあい》を通して我々は浄《きよ》められるのです。苦痛を経由《けいゆ》して我々は智識に達するのです。敬愛する夫人よ、先生はあなたの良人御家族の父君で御|出《いで》でしたが、また凡そ先生を信愛する者の総ての父でした。敬愛する夫人よ、あなたは今ヤスナヤ、ポリヤナ[#「ヤスナヤ、ポリヤナ」に二重傍線]小王国《しょうおうこく》の皇太后で御出ですが、同時にあなたを識《し》る程の者の母君となられるのである事をお忘《
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