犬税がやかましいので、子供を縁づけるに骨が折れる。徒歩でも車でも出さえすると屹度|跟《つ》いて来るが、此頃では東京往復はお婆さん骨《ほね》らしい。一度車夫が戻り車にのせてやったら、其後は車に跟いて来て疲れると直ぐ車上の儂等を横眼に見上げる。今一疋デカと云うポインタァ種《しゅ》の牡犬《おいぬ》が居る。甲州街道の浮浪犬で、ポチと云ったそうだが、ズウ体がデカイから儂がデカと名づけた。デカダンを意味《いみ》したのでは無い。獰猛《どうもう》な相貌をした虎毛《とらげ》の犬で、三四疋位の聯合軍《れんごうぐん》は造作もなく噛《か》み伏せる猛犬《もうけん》だったので、競争者を追払ってずる/\にピンの押入|聟《むこ》となった訳《わけ》である。儂も久しく考《かんが》えた末、届と税を出し、天下《てんか》晴《は》れて彼を郎等《ろうどう》にした。郎等先生此頃では非常に柔和になった。第一眼光が違う。尤も悪《わる》い癖《くせ》があって、今でも時々子供を追《おい》かける。噛みはせぬが、威嚇《いかく》する。彼が流浪《るろう》時代に子供に苛《いじ》められた復讎心《ふくしゅうしん》が消えぬのである。子供と云えば、日本の子供は
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