かりそめに草にとまったかとも思われる。寿命も短くて、本当に露の間である。然も金粉《きんふん》を浮べた花蕊《かずい》の黄《き》に映発《えいはつ》して惜気もなく咲き出でた花の透《す》き徹《とお》る様な鮮《あざ》やかな純碧色は、何ものも比《くら》ぶべきものがないかと思うまでに美しい。つゆ草を花と思うは誤《あやま》りである。花では無い、あれは色に出た露の精《せい》である。姿|脆《もろ》く命短く色美しい其面影は、人の地に見る刹那《せつな》の天の消息でなければならぬ。里のはずれ、耳無地蔵の足下《あしもと》などに、さま/″\の他の無名草《ななしぐさ》醜草《しこぐさ》まじり朝露を浴びて眼がさむる様《よう》に咲いたつゆ草の花を見れば、竜胆《りんどう》を讃《ほ》めた詩人の言を此にも仮《か》りて、青空の※[#「さんずい+景+頁」、第3水準1−87−32]気《こうき》滴《したた》り落ちて露となり露色に出てこゝに青空を地に甦《よみがえ》らせるつゆ草よ、地に咲く天の花よと讃《たた》えずには居られぬ。「ガリラヤ[#「ガリラヤ」に二重傍線]人よ、何ぞ天を仰いで立つや。」吾等は兎角青空ばかり眺めて、足もとに咲くつゆ草を
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