拘束された。主人が拘束されなかったのはまだしもであった。

       四

 白の旧主《きゅうしゅ》の隣家では、其家の猫の死の為に白が遠ざけられたことを気の毒に思い、其息子が甘藷売りに往った帰りに神田の青物問屋からテリアル種《しゅ》の鼠《ねずみ》程《ほど》な可愛い牝犬《めいぬ》をもらって来てくれた。ピンと名をつけて、五年来《ごねんらい》飼うて居る。其子孫も大分|界隈《かいわい》に蕃殖した。一昨年から押入婿《おしいりむこ》のデカと云う大きなポインタァ種の犬も居る。昨秋からは追うても捨《す》てゝも戻って来る、いまだ名無しの風来《ふうらい》の牝犬も居る。然し愚な鈍な弱い白が、主人夫妻にはいつまでも忘られぬのである。


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白は大正七年一月十四日の夜半病死し、赤沢君の山の上の小家の梅の木蔭に葬られました。甲州に往って十年です。村の人々が赤沢君に白のクヤミを言うたそうです。「白は人となり候」と赤沢君のたよりにありました。「白」は幸福な犬です。
  大正十二年二月九日追記
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     ほおずき

       一

 其頃は女中も
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