ゝ日は早や暮《くる》るに間《ま》もなくなった。何処《どこ》かに鴉《からす》が鳴く。余はさながら不測の運命に魘《おそ》われて悄然《しょうぜん》として農夫の顔其まゝに言《ものい》わぬ哀愁に満ちた自然の面影にやるせなき哀感《あいかん》を誘《さそ》われて、独|望台《ぼうだい》にさま/″\の事を想うた。都会と田舎の此争は、如何に解決せらるゝであろう乎。京王は終に勝つであろうか。村は負けるであろうか。資本の吾儘《わがまま》が通るであろう乎。労力の嘆《なげ》きが聴かるゝであろう乎。一年両度|緑《みどり》になり黄《き》になり命《いのち》を与うる斯二十万坪の活《い》きた土は、終古《しゅうこ》死の国とならねばならぬのであろうか。今|憂《うれい》の重荷《おもに》を負《お》うて直下《すぐした》に働いて居る彼爺さん達、彼処《あち》此処《こち》に鳶色に焦《こが》れた欅《けやき》の下|樫《かし》の木蔭に平和を夢みて居る幾個《いくつ》の茅舎《ぼうしゃ》、其等《それら》は所謂文明の手に蠅《はえ》の如く簑虫《みのむし》の宿《やど》の如く払いのけられねばならぬのであろうか。数で云うたら唯《たった》二十万坪の土地、喜憂《きゆう》を繋《か》くる人と戸数と、都の場末の一町内にも足らぬが、大なる人情の眼は唯|統計《とうけい》を見るであろうか。東京は帝都《ていと》、寸土《すんど》寸金《すんきん》、生が盛《さか》れば死は退《の》かねばならぬ。寺も移らねばなるまい。墓地も移らずばなるまい。然しながら死にたる骨《ほね》は、死にたる地《ち》に安《やす》んずべきではあるまい乎。寺と墓地とは縁もゆかりもない千歳村の此耕さるべき部分の外に行き得る場所はないのであろう乎。都会が頭なら、田舎は臓腑《ぞうふ》ではあるまい乎。頭が臓腑を食ったなら、終《つい》には頭の最後ではあるまい乎。田舎はもとより都会の恩《おん》を被《き》る。然しながら都会を養い、都会のあらゆる不浄を運《はこ》び去り、新しい生命《いのち》と元気を都会に注《そそ》ぐ大自然の役目を勤むる田舎は、都会に貢献する所がないであろう乎。都会が田舎の意志と感情を無視して吾儘《わがまま》を通すなら、其れこそ本当の無理である。無理は分離である。分離は死である。都会と田舎は一体《いったい》である。農が濫《みだり》に土を離るゝの日は農の死である。都《みやこ》が田舎を潰《つぶ》す日は、都自
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