のかけらに食い込んだ氷に杖を打ち込んで、また東へ向かって登って行った。
 私たちはガッグと呼ばれる岩角に来た。すぐ右手は、シュトラールエックホルンの尾根つづきであるが、頭の上まで薄青く、銀河のようにつづいた積雪のほかには何も見えない。
 雪は、ガッグのはずれから、また急に深くなって、右側の急斜に沿うてぐるっと曲がって行くと、昨日の足跡はそこでばったり止まって、目の前には、ひろびろとした雪田が横たわる、シュレック・フィルンである。
 ろうそくが惜しいので、ランターンを消してしまって、この昨日踏み固めに来た終点で、ひいて来たロープの上に腰をおろして一休みした。三千三百メートルと、地図に記された地点である。
 ランターンを消してしまうと、目はようやく暗がりに慣れて、星明かりが思ったよりも明るくなる。私たちの正面には、クーロアールが胸をつくばかりにつっ立っている。まっ黒にそびえた、そのアレトに境されて、下はクーロアールの、「辛うじて積雪をとどめ得る」と記載された急斜で、上は満天の星が、グロース・シュレックホルンの空にばかり集まったように忙しくまたたいている。アレトの上を斜めに流れたのを、銀河と
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