処に斯うしていても、何とも言うに言えない失態《ぶざま》が未だに身に付き纏うているようで、唯あの土地を、思っても厭な心持がする。ナニ糞! と思って了えば好いのだが、そう思えないのは矢張りお宮に心が残るのであろう。と、ふっと自分が可笑《おかし》くもなって、独り笑いをした。
 後はまた、それからそれへと種々なことを取留めもなく考えながら、呆然《ぼんやり》縁側に立って、遠くの方を見ると、晩秋《あき》の空は見上げるように高く、清浄《きれい》に晴れ渡って、世間が静かで、冷《ひい》やりと、自然《ひとりで》に好い気持がして来る。向の高台の上の方に、何処かの工場の烟であろう? 緩く立迷っている。
 それ等を見るともなく見ると、私は、あゝ、自分は秋が好きであった。誰れに向っても、自分は秋が好きだ/\、と言って、秋をば自分の時節が回《めぐ》って来たように、その静かなのを却って楽しく賑かなものに思っていたのだが、此の四五年来というもの、年一年と何《ど》の年を考え出して見ても楽しい筈であった其の秋の楽しかったことがない。毎年《いつ》も唯そわ/\と、心ばかり急がしそうにしている間《ま》に経って行って了う。分けて此
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