するも愚痴のようですけれど、そのために、私はとても一と口や二た口にいえない苦心をして来たのです」
私はもっぱら女主人の同情に訴えるつもりで肺腑《はいふ》の底から出る熱い息と一緒にかこち顔にそう言った。いくら冷淡と薄情とを信条として多勢の抱妓《かかえ》に采配《さいはい》を揮《ふ》っているこの家の女主人にしても物の入りわけはまた人一倍わかるはずだと思ったのであった。すると彼女は今まで話していた調子とすこし変って、冷嘲《れいちょう》するような笑い方をしながら、
「あんたはんそんなことをおいいやしたかて、お園さんにはもうずっと前から三野村さんという人がおしたがな。三野村さんが今まで生きとったらとうに夫婦になってはる」
遠慮もなく、ずばりといい放った。それを聴くと私はぐさりと心臓に釘を刺されたようにがっかりした。が、そんな深くいい交わした男があるのも知らずに、自分ひとりで好い気になって自惚《うぬぼ》れていたと思われるのがいかにも恥かしいので、強《し》いてそんな風を顔色に出さないようにしながら、私はややしばらくいうべき言葉もなかったが、やがてわざと軽い調子で、
「ええそんなことも少しは知らぬで
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