、われとわが拳固《こぶし》をもって自分の頭を殴《なぐ》って、逸《はや》り狂う心の駒《こま》を繋《つな》ぎ止めたのであった。けれども、さすがの私も、後にはとうとう隠忍しきれなくなって、焦立《いらだ》つ心持をそのまま文字に書き綴《つづ》ってやったのである。女の方でも、こちらの心持はよく知っているので、手紙でいってやることを、ただ何でもなく聞いているわけにはいかなかったのである。それがために気が狂ったといえば当然のようでもあるがまた可憐《かれん》なような気もする。
 私は何となく女主人《おんなあるじ》の顔から眼をそらしながら、
「脅かしたわけでもなかったんですが、私にしてもあれくらいのことをいう気になるのも無理はないと思うんです。……」と、私はいいなして、後をすこしくいい澱《よど》んでいたが、彼女がもうここにいなくなったのであるから、今となってそれをいったところで、格別女主人の気を悪くさする気づかいもないと思ったので、自分がとうから女の借金を払って商売の足を洗わすつもりであったことを話して、
「こんなことはもう幾十たびとなく知り飽きていられるあなたがたに向って今さらこんな土地にありうちの話を
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