りながら、
「あッ、そうだったか、若奴さんとはちょっと気がつかなかった。あんたがあんまり好い芸妓《げいこ》さんになったもんだから、そういわれるまでどうしても思い出せなかった」そういって、私はまた彼女の顔をしみじみと見ていた。ほんとに四、五年前見ていた時分とはまるで比べ物にならぬくらい美しい女になっているのに私は驚いたのであった。
 女主人は機嫌好げに彼女の顔と私の方とを交《かわ》る交《がわ》る見ながら、
「ほんまに好い芸妓《げいこ》さんになりゃはりましたでっしゃろ。この妓《ひと》にも、好きな人がひとりあるのっせ」と、軽く弄《からか》うようにいうと、若奴は優しい顔に笑窪《えくぼ》を見せて羞《はず》かしそうにしながら、両掌《りょうて》で頬のあたりを擦《こす》って、
「ほんまにあのころはよう寄せてもろていましたなあ」
と、過ぎ去った時分のことを思いうかべるような顔をしている。私もそれにつれてそのころのことがまた思い起されるのであった。
 涼しい加茂の河原にもうぽつぽつ床《ゆか》の架かる時分であった。春の過ぎてゆくころからほとんど揚げつめていた女がだんだん打ちとけてくるにつけて、
「なあ、へ、
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