硬《かた》くなって口ごもっていると、そこへ外から今帰ったらしい若い妓《おんな》が一人出てきて、
「ただ今」といいながら長火鉢の傍に寄った。
女主人はそっちを向いて、
「おかえりやす」と返事しながら何か二言三言話していたが、また私の方を見て、
「あんたはん、この妓《ひと》を知っといやすやろ」という。
私はちょっと思い出せないので小頸を傾けながら、その妓の顔をまじまじと見ていると、向うではよく知っていると思われて、
「よう知っています」といいながら、私の顔を見て笑っている。十八、九ばかりの小柄な妓《おんな》であるが口元などの可愛い、優しい容姿《すがた》をしている。女主人も笑いながら、
「なあ、よう知ってやすはずどすがな」といって、私の顔を見ている。
私はこんな美しい妓《こ》に知っていられる覚えがないというよっに、なおもしきりに頭を傾けていると、女主人が、
「お園さんと一緒にようあんたはんに招《よ》ばれて往かはりましたがな、若奴《わかやっこ》さんどすがな」といったので、私はやっと思い起した。そして四、五年前に較《くら》べると全く見違えるほど成人した若奴の大人びた容姿を呆れたように見まも
前へ
次へ
全99ページ中68ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
近松 秋江 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング