るで二十《はたち》余りの女のように柔和である。顔から容姿《すがた》から、とてもそんな年寄りとは思えない。これがその昔祇園街で全盛を誇った薄雲太夫の後身かと思うと、私は妙な好奇心にも駆られながら、そう打ち融けた言葉をかけられたのを機会《しお》に、
「は、どうぞ、ご免なさいまし」
といって、さっと起って長火鉢のこちら側まで進んで小婢《おちょぼ》のなおした座蒲団の上に坐った。
色気のない束髪に結って、何かしら野暮な物を着た大柄で上品に見える女主人は柔和な顔で、二、三日前に持っていった物の礼をいったり、今までいつ訪《たず》ねて往っても留守がちであったりしたことを言って「こんな商売をしてますよって、朝は遅うおすし、昼からは毎日お詣《まい》りにゆくか、そでなけや活動が好きでよう活動見に往きますよって、いつも夜の今時分からでないと家《うち》にいいしまへんもんどすさかい」と、若い声でいっていた。
私は、多年情海の波瀾《はらん》を凌《しの》いで来た、海に千年山に千年ともいうべき、その女主人と差し向いに坐っていると、何だか、あまりに子供じみた馬鹿らしいことをいい出すのが気恥かしいようで、妙に自分ながら
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