ように冷たくっても、ほの白く露霜を置いた、しっとりとした夜であった。私は、その女の勤めていた先の女主人《おんなあるじ》に会うために、上京《かみぎょう》の方から十一時過ぎになって、花見小路《はなみこうじ》のその家に出かけて往った。
もう去年の十一月の末、女がそんなことになった時から、直接に女主人にぜひ一度会って、彼女の勤めていた時分のことから病気で引いた前後の事情を、自分の得心するように委《くわ》しく訊いてみたいと思っていたのであった。※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]を商売とするその社会の者の習いで、こちらが客として今まで外部から知ることの出来なかった裏面の真相を、はたしてどれだけの誠意を披瀝《ひれき》して聴かしてくれるものか、それと知りつつ、わざわざ笑われるために行くのも阿呆《あほ》らしいようで控えていたが、それでも、いつまでも女のいるところが知れなくって懊悩に懊悩を重ねていた時分には、もう思案に余って愚かになり、女の在所《ありか》を探し出すことが出来なければ、せめて彼女の話でも、誰かを対手にしていたい、それには先の主人に会っていろいろな話を訊いたならばあるいは手が
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