つちや仕様がない、私は三年経つたら真打になるつもりだと言つたら、後で遊輔が彼奴は少し気が触れてると言つたさうです。
○
次は私の貧乏話。
其の後私は禽語楼さんに縁あつて弟子になりました。トントン拍子で、実に間がよかつたと言ひますか、三年目に先代燕枝にもらはれて行つて弟子になり、それから真打になり、小燕枝となりました。だが、それ迄になるにはそれはどの位死なうかと思つたか分りません。人間死の苦しみつて言ふことを言ふが、それを一遍やらなくちや確かに駄目です。
前にも申した通り、ただもう苦しくて貧乏でどうにも仕様がない、寄席はつて言ふと、これは相当人気だけはあつたから、金を貸しては呉れます。これも然し大した金ぢやなく、あつちで二十円、こつちで三十円と言ふのが最高で、その代り俺の所にかかつたら割りで入れて呉れよと言ふ、ヘイ/\割で(割と云ふのは私の収入)お入れ申しますからと言ふんで借りたもんです。その借りた金は何にするかと言ふと端席(端席と云ふのは場末の小さい寄席)に使ふ。その時分私は駈出しでしたから、真打で通る為には端席を取ると金を出さなければならない。お客が来ないから、前
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