ひました。動もすると、こいつ時勢がするんだとか何とか言ふやうなことを言つてますが、そりや人間やはり時勢に伴つて行かねばならないこともあるかも知れませんが、義理も人情も欠いてしまつてただ時勢に伴つてと言ふそんな自分勝手な理窟は私は無いと思ひます。
 所で先づ昔の修業といふと、最初仮りに前座見習といふ役をして、それから始めて前座になれる。前申上げた通り前座は羽織を着ることも出来ない。絹物を着ることも出来ない。家へ帰つてはお召しの褞袍を着てゐても、楽屋入りする時はちやんと木綿の着物を着て、角帯を締めて白足袋を穿いたものです。今日は動ともすると紺足袋を穿いて高座へ上つてゐるけれど、昔は高座へは必ず白足袋を穿かしました。さうして、看板のあんどうに灯りのはいらない中に楽屋入りをして、外の看板の灯りがはいると一番といふ太鼓を入れ、そこへ下座が来ます。二つ目の噺家がはいつて来ると二つ目の噺家さんに「二番を入れたう御座いますからお手を拝借いたしたう御座います」と頼み、横柄な面をして出て来た二つ目の噺家に手伝つて貰つて二番目の太鼓を入れます。それから先づお茶を注いで、掛持ちをする人にずーつとお茶を出す、下
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