柵の中の長身な男は一層興奮した。
「君達は一体何者だ!」
喜作は、
「何者かつて云ふが、そもそもこゝで半鐘をたたいたから集つて来たんだぜ」
と、案外冷静に云つた。
「いや」
と、房一が進み出た。
「私共は、これも(練吉を指して)この町の医者です。実は火事だといふから駆けつけたので。聞けば、演習だといふことですが、それなら前もつて町役場なり駐在所なりへ通知があるべき筈だと思ひますが、それはなさつたでせうな」
房一の態度が穏かだつたので、相手はいくらか落ちついた。
「それは、小規模な演習だからして居らん」
「ふむ、さうすると――」
さう云ひかけた時だつた。さつきから口々に何か叫び、又しづまりかへつてゐた下方で突然又あの板切れの井桁積みがくづれる音がした。その異様な、ばりばりといふ音は何か鋭い速い広い浪のやうな不安をひろげた。それは偶然の不吉な暗示を与へたやうなものだつた。誰かが、ずつと先きの方で溝をとび越え、木柵にとりついた。すると、又何人かが土手を駆け登つた。めりめりと木柵を引倒す音が立つた。と思ふと、房一は突嗟《とつさ》に身をひるがへして土手づたひにその方へ走つてゐた。彼は一
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