のひつきりないざわめきによつてよけい強くなつた。誰も彼も上気し、家の中に落ちついてはゐられなかつた。盛子は長い小豆色のぼかしのある羽織の下に、ふくらみのある身体を巧みに隠し、河場からやつて来た義母と並んで戸口に立つて通りを眺めてゐた。今さつき山車《だし》がそこを通つたばかりであつた。山車の屋上では狐忠信の人形が黒い眉を上げ、口をへの字に曲げ、腕を構へて造花の中に立ちながら、揺れて思ひがけない風に頭を振り、提灯と小旗の下を過ぎて行つた。と思ふと、そこの曲り角のあたりで拍子木の音が起り、山車はとまつて、乗つてゐた踊り子が山車についた舞台の上で扇をかざし、きつかけを外して囃《はや》し方《かた》をかへりみて恥しげに笑ひ、あらためて又とんと板を踏み鳴らし、何かの踊りをはじめるのが見えた。間もなくそれも遠くへ行つてしまつたが、人はざわざわ行つたり来たりしてゐた。そこらでも、こゝらでも、遠くでも、絶えずどよめきの音が聞えてゐた。
 あの紙衣裳を着た神主達は今どこを歩いてゐるのだらう。どこかの空地で、ばさばさ音をたてる袖口をたくし上げて、握飯をほゝばり、お茶を啜つてでもゐるだらうか。きまりは、町の端々
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