から通りといふ通りは、どんなところでも歩かねばならないのだ。昨日まで迂散《うさん》臭い顔で紙衣裳を眺め、触つてみようともしなかつた房一は、いよいよ着こむときになると案外な度胸を示した。ボール紙の冠をかぶり、紐を顎の下できゆつと結ぶと、肉づきのいゝ顔を一寸ひきしめて、どうだ! といふ風に盛子に擽つたさうな目をくれた。それはとにかく珍妙ないでたちにちがひなかつた。が、しかし、たとへ紙にもせよ、一定の式服といふものの持つ効果はたしかにあつた。それは本物のそれのやうではなかつたにしても、とにかく何かしら堂々としてはゐた! そして速製の「威儀を正した」顔さへ自然と誘ひ出しさうであつた。
盛子は上から見、下から見しながら、
「馬子《まご》にも衣裳つて云ふから――」と云つたほどである。
が、ぴんと張つた肩衣のためによけい幅広く見える後姿で、木箱のやうな沓《くつ》をがたつかせ、戸外の明い日ざしの中でその紅い滲んだ紙色をまざまざと照し出されながら、歩いてゆく房一を見送つたときには、紛ふことなき珍妙さが、しかも「堂々」と歩いてゐる形だつた。そして、百何十人もの老壮若の戸主達がこのばさばさした紙で着ふく
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