小柄な様子には、何でも似合ふやうなところがあつたので、この紙衣裳さへ似合ふにちがひなかつた。小谷は何とかして、この場で房一に着させよう、その効果を楽しまうと考へてゐるらしかつたが、房一が相手にならないので、話を他に持つてゆき、いきなりこんなことを云ひ出した。
「誰でも主人が出なくてはいけないきめ[#「きめ」に傍点]でせう。すると、千光寺さんはどういふことになりますかね。坊主が神主の恰好をするのもをかしなもんぢやありませんかね!」
三
その日、河原町では早朝から何かしらざわめいてゐた。町の裏手に迫つてゐる山々はちやうど東側にあたつてゐたので、朝の日は河原町の上に光を投げて家々の白壁を明く浮き上らせる前に、町の西方にひろがつた盆地の端に低く長く横はつてゐる小高い丘陵地(それは最近切り倒された雑木山であるが、町からはかなり遠いので、何だかそこだけが茶褐色の埃を浴びてゐるやうに見えた)に最初の薔薇色の光を投げかけた。空にはきれぎれの雲が浮かんでゐた。それはどこを向いて流れてゐるとも判らないほどゆつくり動き、動くにつれてだんだん形を変へ、うすれ、又新しい雲がどこからか生れてゐたが
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