らあのいくらか仁義を切るやうな半シャツの甥の身構へだの、それらがもう一度頭の中に蘇《よみがへ》り、一列になつて通つて行つた。
 房一は苦笑した。とにかく珍客にはちがひなかつた。そして、たつた今さつきまで房一は彼等のお見舞ひでわれ知らず興奮し、緊張し、それからあの半シャツの男と言葉の上でなく、眼と眼で、構へと構へでやりとりした、それが突風の去つた後のやうな軽いあつけなさを残してゐた。
 が、ふいに一つのことが彼の頭に閃いた。それは盛子の妊娠だつた。それもたつた今さつきはじめて耳にしたことにちがひなかつた。が、この事はすでにずつと前に聞き、彼の心にぐつと深く喰ひこんでゐることのやうに、思ひ出すと同時に何か身体中がさつと目覚めて来るやうな厚ぽつたい感覚で蘇つて来た。
「あれ[#「あれ」に傍点]らしいのよ」
 さう云ひながらぽんと軽く下腹をたゝいた盛子の巧みな、しな[#「しな」に傍点]のある手つきが目に浮かんだ。それは、そこだけ切つてとつたやうな鮮かさで残つてゐた。
 房一は感動した。あの一言で、何もかも身のまはりが今までとちがつたやうに感じられた。何か一つ微妙なものがこの世のどこかでひよつこ
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