は殆どされるまゝになつてゐたが、身体は案外自由が利くらしく片手をつかつて横になつた。そして又もやぱつちりと眼を開け、不安さうに房一を見上げた。
「ほう。元気だね。ハッパでやられたかね」
 と、房一は訊いた。
 男は眼を閉ぢた。何も答へなかつた。
 印袢纏の背の高い男がその時、半シャツの男に向つて目くばせをした。
 男は病人から房一へぎろりと眼を移すと、
「せんせい[#「せんせい」に傍点]!」
 と、いきなり云つた。
「何んにも訊かんといて下さい。ちよつと間違ひが起きたんやで、――それは、後でお話しますわ――とにかく、手当を頼みます」
「ふうむ。いや、よからう」
 房一は傷を調べにかゝつた。後頭部にもあつた。身体にへばりついたシャツをはぎとると、背部に最もひどい傷があつた、それは紛《まが》ふところのない刃物による刺傷だつた。新しい血がはぎとられたシャツの下から、瞬《またゝ》く間にふき出し、滴《したゝ》り落ちた。
「おつ! こりあいかん」
 房一は急いで膿盆をひきよせた。
「ひどい傷だねえ!」
 思はず口に出かゝつたが、慌ててのみこんだ。彼の頭には今やすべてが明かになつた。土工仲間の刃傷沙
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