生理上の一現象が、又当然いつかは起りうると承知してゐる筈のことが、今や目の前へぶら下げられた一包みの果物か何かのやうに、突然そこに持ち出され、いやでも彼の全注意を惹いてゐるのであつた。いや、それどころではない、今そこに立つてゐる盛子、白い割烹着に包まれ、すらりとした伸びやかな身体までが、その微笑してゐる切れの長い眼つき、悪戯《いたづら》つぽさと羞《はにか》みとのまざり合つてゐる様子だの、そのすべてが、何かしら微妙な、手で触れにくい、不思議な物として見えたのだつた。
「ふむ、さうか」
感心したやうに呟くと、房一はくるりと向ふむきになつて歩き出した。
三
裏口から家の中へ入らうとした時、房一はそこの小路つづきの先きの方に彼の帰りを待ち構へてゐたらしい様子で突立つたまゝこちらを眺めてゐる二人の男に気づいた。
二人とも巻ゲートルに地下足袋姿であつた。そのうちの一人は印袢纏《しるしばんてん》を着てゐた。房一の見たこともない連中だつた。だが、先方ではこの釣竿をかついだ猪首のやうな男が目ざすお医者だと気づいたのだらう、印袢纏の背の高い男は黄く汚れた半シャツの男に向つて、こちらを見
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