た所で、ふりかへつて盛子を待つた。そして、何となく様子のちがつたゆつくりさで登つて来る盛子の、上《う》は目になつた、意味ありげに笑つてゐる顔を見た。
「ねえ」
盛子は妊娠してゐた。
もう一月あまり前から気づいてゐたのだが、はつきりしなかつた。云はうか云ふまいかと迷つてゐた。たつた今、大きな麦藁帽子の縁で半ば隠されてはゐるが、むくれ上つた幅の広い肩がぴよいぴよい目の前を歩いてゆくのを見てゐるうち、突然云ひやうのない親しさの感覚に捕へられた。打ち明けてみたくなつた。何にも如らないで、こんなに変な風に脚を丸出しにして、私にはおかまひなしに先を歩いてゐる!
並んで立つと、いきなり
「わたし、あれ[#「あれ」に傍点]らしいのよ」
云ひながら、ぽんと軽く下腹をたゝいてみせた。そして、微笑した、悪戯《いたづら》つ子のやうな目つきで、ぢつと房一の顔をのぞきこんだ。それは驚くほど巧みな打明けだつた。
房一は面喰つて、ぽかんと口を開けた。
「いつから――?」
やつとこさ、さう云つた。まだ本当とは思へない、だが他には考へやうもない、そのたつた一つのことが、彼が医者としてあんなによく知り抜いてゐる
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