と水洗ひをして、それを日に焼けた石の上に乾した。そのまゝ房一と小谷の前に来ると、美事な半裸体のまゝ腕組みをして突立つた。一種単純な、力づくといつた様子が現れてゐた。
「ハッパもいゝが、近頃は土方がいたづらをするとか云うて、女の子が下の方を恐はがつて通らんていふぢやないかね」
「さうだつてねえ」
小谷は仰山《ぎやうさん》な表情になつた。
「うん、おれもこないだ通り合せたんだが、前を山支度の娘が寵をかついで歩いてゐるんだな、するとやつぱり大声でからかつとつたよ」
房一は苦が笑ひをした。
「いや、人目がなきあそれどころぢや済まんでせう」
「困つたもんだね」
「何しろ、わや苦茶だ」
徳次は人の好い、いかにもさう信じこんだやうな眼で二人を眺めた。
「だいいち、あすこの小倉組の親方といふのがね、うちの店へもたまに買物に来るんだが、鬼倉といふ綽名がある位でね、見たところ痩せつぽちのさう強さうもない奴なんだけどね、すごいんださうだ。――こないだも郵便局で見た人があるんださうだが、配下の者が何かしつこく不服を云つたら、いきなりかう、二本の指でね――」
と、小谷は人差指と中指を二本突き出して見せて
前へ
次へ
全281ページ中166ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
田畑 修一郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング