ら、つづけて
「あなたは御存知ないんですかね」
「どういふことです、わたしにはさつぱり――」
房一はさつきから自然と聞いてはゐたが、事は初耳だつた。
「ですが、一体財産譲渡つて云ふのはいつのことなんです、大分前ぢやないですか」
富田は庄谷の方に向きなほつた。
「さあね、もうかれこれ二十年にもなるだらうかね」
「えらい昔話が又ぶり返したんだな」
「あれは何でせう、知吉さんといふ人は悪く云ふと娘をひつかけて相沢の家に入りこんだやうなもんでせう」
「さうだな、相沢の先代はひどく知吉さんを毛嫌ひしてゐたさうだな。だが娘がくつついてゐるから仕方がないといふわけでね。――だから、甥にあたる喜作さんを養子にして、それに老後をかゝるつもりだつたのだらう。その時、喜作さんの方に財産を分けたんだよ。ところが、娘が男の子を産んだ。今の市造といつたかな。嫌ひな知吉の子でも、孫にはちがひない、孫は可愛いゝといふわけでね、喜作さんにはそのまゝ財産をつけて神原の方へ籍をもどしたんだな。――それを今かへせといふわけよ」
「どうして又今まで黙つてゐたのかね」
「相沢の先代が生きてゐる間は知吉さんも手が出なかつたのさ
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