に自分の船の所へもどつて行つた。
三
川沿ひから分れた路は段々になつた切株だらけの乾田に沿つて、次第上りに、両側はゆるやかな山合ひに切れこんでゐた。
房一は自転車を降りて押しながら歩いた。しばらく行くと貯水池が見えて来た。あたりは松林で、その抜き立つた幹の間から水面が光つてゐた。向ふ側は半ば葉を落した雑木山だつた。いたる所が透いて、明《あかる》く、からりとした空気の中を時々つんと強い山の匂ひがした。
「ジョン、そら! ウシ!」
房一は叫んだ。犬は房一の顔を見上げ、二三間走り、後がへりをし、それから急に葉の落ちた灌木の中にとびこんで行つた。がさがさやつて、ずつと先の路に出た。きよとんとし、時々匂ひを嗅いだ。
「ウシ! ウシ!」
又走り出して、草の中に鼻を突つこんだ。が、今度はすぐもどつて来た。房一は緊張した表情をつくつて、その背をつかんでぐつと押した。
犬は横へとびこんだ。だが、匂も嗅がず、草の中から頭を出して、房一の方をしきりと眺めながら同じ方向に歩いてゐる。
「はゝ、知つてゐるな。よし、よし何もゐやしない」
だが、やつぱり戻らないで、しきりとこつちを見ながら
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