ォっと荒削りの板で幾つか木箱でも作ってくれるだろう。それが一番格安でもあり、便利だと、迂闊に日本風に考えていたのだが、出帆の日も迫ったのであちこち[#「あちこち」に傍点]聞き合わしてみると、日本と違ってそこらの町角や露路に棟梁の家《うち》があるわけではなし、さんざ困った揚句、それではと言うので箱から荷作りまですっかり運送屋に一任することにした。ところが、これが、箱一つ造るのに十日あまりもかかるとあっては、とても急場の間に合わない。おまけに、本箱一個十円以上もする。というと、ワニスか何か塗った本棚代用の箱でも想像する人があるかも知れないが、なるほど、馬鹿固い英吉利《イギリス》の人の仕事だけに、巌畳《がんじょう》な点は可笑しいほど巌畳を極めたものに相違ないけれど、要するに、送る途中だけ用に足りればいいのだから、第一、そんなに非常識に丈夫であることを必要としないし、何と言っても、石油箱の大きなののような、碌《ろく》に鉋《かんな》もかけてないぶっつけ[#「ぶっつけ」に傍点]箱が一|磅《ポンド》もするとは驚くのほかはない。しかし、これも考えてみると無理もない話で、英吉利は、というより欧羅巴《ヨー
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