。道路の横に大釜が据えられて、口きり一ぱいに羊の脂肪が沸騰している。この釜のまわりの子供と蠅・それを叱る母親・一せい哄笑する町の人々・じつに盛大に混沌雑沓を極めている。
波止場の附近では行商人に悩まされた。しかし、彼らはそれでも売るべき何ものかを持っていたが、もうここまで来ると、人は、売るべき何ものをも所有していない。だから、乞食は黙ってその病毒の患部を示し、子供達はわけもなく馬車を追って競争し、女はしきりに車上の行人に膚《はだ》をあらわす。
肉屋がある。血だらけな肉切り台は銀蠅で覆われてる。何という反食慾的な腐爛した臭気! そして、これはまた、何と悲しい麺麭屋《ベイカリー》だ! 店頭のぱん[#「ぱん」に傍点]は、数度の発疹に蒼白く横たわって息づいている。不潔と醜怪。狭い往来は病気の展覧会だ。狼瘡《ルウパス》、風眼、瘰癧《るいれき》、それからあらゆる期程の梅毒――。
馬車は急ぐ。
老人の忘八《ホア・マスタ》が、馬車と平行して走る。
『あらびやの女がいますよ。アラビヤの女が――。』
右からも左からも色んな声が馬車を包囲する。
『仏蘭西《フランス》の女! |大佐さん《ムシウ・カア
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