に焼いた装飾・二の腕の桃の刺青《ほりもの》。
狭い東洋の門戸――PHARAOHの国。
Rue du Nil 街は、木造建築の銀行と煙草の屋台店――ここを下って、土人区へ這入る。
巴里《パリー》でいえば古着古物屋町《ラグ・ピッカアス・セクション》だ。半暗と湿気と悪臭の横町が、迷園のように縦横に走り、やけにひさし[#「ひさし」に傍点]の突き出た、原色塗りの低い建物がお互いに助《す》けあって並んで、誰かの言った「天刑病市ポウト・サイド」の感じを適切に裏書きしている。砂と埃・半裸体の街上の少年少女・トラホウムで赤い彼らの眼と・細い腕・病菌の沈澱してる路傍の黒い水溜り・胴だけで地べたに笑ってる乞食・骨と皮と耳ばかりの驢馬《ろば》・その脚の関節の真赤な傷口に群れている虻《あぶ》・邪悪そのもののようなキャフェの土間口・そこの軒下に立って葱《ねぎ》を噛《かじ》っているアラビヤ人の木炭売り・往来の中央で反芻《はんすう》に口を動かしている山羊のむれ・通りを隔てて喚《わめ》き合う会話・これら一切のうえに往き渡るむっ[#「むっ」に傍点]と鼻をつくにおい――おまけに、ここらの台所は共同で、しかも野外である
前へ
次へ
全59ページ中45ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング