ない。
裸足《はだし》の少年靴みがき団を筆頭に、花売り娘、燐寸《マッチ》売子、いかさま賽《さい》の行商人、魔窟の客引き――そう言えば、このポウト・サイドには、土人区域の市場を抜けて回教堂《モスク》の裏へ出ると、白昼、数時間寄港の船員や旅行者を相手にする、陰惨な点で世界的に有名な一廓がある。波止場で馬車に乗ってただ黙って笑えば、馬車屋のほうで心得ていてそこへ案内するにきまってるほどの名所である。
では、レディ達をルウ・ドュ・コマルス街の珈琲《コーヒー》店の椅子へ一時預けにしておいて、出帆前にちょっとそのポウト・サイドの奥の奥と言うのを覗いて来るとしようか。
馬車で行こう。
がら・がら・がら・がら――焼けた敷石に車輪を鳴らして、僕らはいま、あらびっくで何々|街《シアリ》―― Sharieh ――と呼ばれる大通りを走らせている。
両側は、マホメッドの人種市だ。
店という店から人が飛び出して声をかける。
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“Thisway monsieur colonel !”
“Here you are,anata―anata !”
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